映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ニコライ・ミューラーショーン 監督「レッド・バロン」743本目

いい映画でした。
戦場もの、しかも事実に基づくドキュメンタリー。でも、敵のエースの墓に戦闘機から花束を落とすというエピソードから始まることで、若くて端正なパイロットたちがロボットなどではなくて生身の若者たちだと感じられて、見る人は親しみを感じます。

80年代だったら、一流大学の魅力的な新入生達として描かれたような、ユーモアやヒューマニティにあふれた、将来有望な彼ら。

80機を撃ち落としたエース中のエースに、その後恋人となる看護師が言ったことは、”彼が勝ち続けることで、若い人たちが憧れて戦場を目指すのが怖い。結局みんな死んでしまうのに”ということ。
エースパイロットはその言葉で目を覚まし、次のフライトでついに墜落する。
こういう視点の映画があるんだ、と思ってはっとしました。
この映画をいま日本で見ることは、「風立ちぬ」を見るのとは違う影響がありそうです。

戦争のむなしさを描いた映画でも、亡くなった人たちに対する敬意を表そうとすると、どうしても「美しく死んだ」という描き方をしてしまうのではないかと思います。この映画は、観客自身を「美しく死ぬ一兵隊」に重ねるのでなく「若者達を死に追いやる自分」に引き戻す、重要な視点を持っていると感じました。

ドイツで制作された映画だそうですが、全編英語です。国外の人たちにも見てほしい、という強い気持ちが込められているのかもしれません。