映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

山田洋次監督「息子」742本目

永瀬正敏のチンピラっぽさってほんとにいいな。
三國連太郎がさえないじいさんを演じてるのも、うまい!
ろうあ役の和久井映見と結ばれて、本当によかったと見ている人たちは感情移入できると思う。最後に老父が岩手の家で暮らして行く孤独を苦く見せるのは、そこで終わると深みが足りないと思ったのか?これをここまでわかりやすく苦くしなくても、おのずから観客の中に見えてくると思うけど。

東京物語」ほか、同じテーマを繰り返し繰り返し日本の監督が撮りたがるのは、ロミオとジュリエットみたいに、舞台を変えて描きたいテーマなのか、それとも最新の舞台に置き換えないと伝わらないんじゃないかと監督が思ってるのか?

ひとつだけ気になる点は、「ろうあ」だけど「美しい娘」っていう設定。彼女がこれほどの美人でなければならなかったのはなぜだろう。エリートの兄は父を邪険にし、弟は「肉体労働者」に「落ちて」いるが、「ろうあ」だけど「美しい」娘と幸せになり、老父のこともあたたかく受け入れる…という、見る人の想像力をまったく必要としない、広がりのない設定にしないと、日本では広く名作と言われないんだろうか。この映画は、日本のふつうの人たちの中に当然のようにほんのりと存在している差別意識を前提として成り立つ感動をめざしてるわけで、監督にではなくそんな社会にほんの少しガッカリしてしまうのです。