映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ミヒャエル・ハネケ監督「ベニーズ・ビデオ」715本目

1992年の作品。もう22年も前か。
カンヌで2年前にパルムドールを取った大御所の監督で、その受賞作は愛にあふれた作品だったんだけど、初期は背筋が凍るような、”本当の冷酷さ”を取り上げた作品も多いです。「ファニーゲーム」がかなり怖かったし、「隠された記憶」でもきわめてふつうに人が殺される場面があったので、この作品はかなり覚悟しつつ、でもやっぱり震えながら見ました。

この男の子、ファニーゲーム(USAじゃないほう)でも冷酷な訪問者を演じてた子だよね?小心者の私は、役で殺戮ビデオを見るのも耐えられないかも〜〜。そして、この映画で少年の父を演じた人が、ファニーゲームでは訪問を受ける善良な男の役だったと思う。

この映画の父と母は、子どもの気持ちや状態に関心がなく、扱いやすい子でさえいてくれればいいと思ってる。
人の気持ちがわからない人たち、という設定。息子もそうだけど親たちも同じ。起こってしまったことを隠すことしか考えられない。母親が緊張かなにかで、普通泣くような場面で吹き出すような様子になるのが、イヤなかんじ。

イヤなものをここまで追求するのって、どんな気分だろう?シワやシミをひとつひとつなぞって、写実的な肖像画を描く…いや、現実のイヤな部分を特に濃く抽出してるから「写実」とは違う。神の視点みたいなものなんだろうか…。

いろいろ言ってますが好きな監督なので、残りの映画もどんどん見ます。