映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

吉村公三郎監督「安城家の舞踏会」630本目

1947年、戦後すぐの作品。
この映画、小津監督作品だとばかり思ってました。原節子が主役だからかな。
じつは吉村公三郎監督作品で、脚本は新藤兼人。没落華族の当主の、世の中の流れを受け入れきれていない言葉や、最後の舞踏会に呼ばれた演奏家の言う陰口、冷淡な息子(森雅之)の嘘、など、脚本のなかの心理描写がこの頃から冴え冴えです。

全体的には、舞台劇のようなかんじ。室内の会話で進行する物語なので、当時こんなふうに演劇が行われてたんだろうなーという感じです。どこか映画黎明期っぽい感じや、ときどき特徴的なカメラ割りなど、いま見るとかえって新鮮です。
華族というのがどういう人たちだったのか全然知らなかったけど、「殿様」と呼ばれていたり「40万石だから」なんて言葉が飛び交っているあたり、江戸時代までの領主の名残が感じられます。

時代の移り変わりにうまく乗れず、過去の栄光をひきずる一家のなかで、現実と希望をつかさどるのが原節子演じる二女。一人でパーティを開催して切り盛りしたり、この映画は完全に彼女一人が中心です。これほど大活躍する原節子を見たのは初めて。清らかで屈託のない笑顔の彼女はまさに太陽。

すばらしい作品でした。