映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

エットーレ・スコラ監督「特別な一日」564本目

中年以降のイタリア人の顔には、笑いジワと眉間の1本ジワの両方がある人が多い。
と、不思議に思ったことがありました。
普段は前にずんずん進んで行く感じで、カラッと明るい彼らの、眉間のシワはどうしてできるのか?
この映画のなかのマルチェロ・マストロヤンニには(ほかの映画でも同様の役が多い気がするけど)、同性愛者という自分らしさを貫き、愛する者と笑い、迫害に対して深く苦悩する男。“イタリア人は明るい”というより、生きることに対してアグレッシブな人の顔、なのかもしれません。(これも充分まだ短絡だけど)

それにしても、本当によく作り上げられた映画です。
ファシズム批判もあるのかもしれないけど、“戒厳令の夜”的な、ふつうではありえない状況に置かれて初めて起こる事件、終わってしまえばいつもの日常に戻ってしまうたった1日の出来事を、映画マジックで構築した、緻密な作品です。映画好きなら一度は見なくては!

マルチェロ氏は柔らかく知的でシリアスかつユーモラス、どんな女性にももてそう!
ソフィア・ローレンの“虐げられた発情期の人妻”もリアリティがあります。
管理人の、ヒゲおばさんも強烈。