映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

スティーブン・ダルドリー監督「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」521本目

この映画の原作を予約して読んだくらい、ジョナサン・サフラン・フォアというこの作家には注目してて、映画化された「僕の大事なコレクション」の原作(タイトルは「エブリシング・イズ・イルミネイテッド」)は人生が変わるほどの衝撃を受けた作品です。
だからストーリーや、この作家の“饒舌すぎる感じ”、イメージがあふれる感じは知ってるし、本の作りからして特殊、だから映画も相当変わっているかも、という覚悟で、911という出来事を彼が描いたものがどう映像化されたかを見てみました。

絵のつくりかたが「ラブリー・ボーン」みたい。
ジオラマ風になっていく風景。おとぎ話風に描くのは、ほんとうに辛いことを包むオブラートだ。
オスカー少年の知能の高さ、饒舌さ、変わり者っぷり。
パパのユニークさ、楽天的で想像力豊かなところ。それが永遠に失われてしまったこと。
ほかの大勢の失われてしまった人たち。
セントラルパークの美しい木陰や、きれいな海。

結論はないけど、これと連ドラの「あまちゃん」には、おそろしいことが起こって傷ついた心を、少しずつしずめて、いつか自然に笑えるようにするための、制作者たちの大きな大きな努力が詰まっている、と思います。