映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ベルナルド・ベルトリッチ監督「シェルタリング・スカイ」485本目

愛し合うことって、素晴らしけど恐い。
愛し合ってるけど行き詰まってる夫婦がいて、さいはての地でその片方が死病におかされる。病院も薬も見つからない。不安や恐怖と戦いながら看病しても、願いはかなわず。妻はひとり、隊商に混ぜてもらって旅を続ける。

Sheltering sky、「空が守ってくれる」という台詞もあったけど、空は彼を守らずその地で命果てさせたのでした。それでよかったのか、悔いはないのかマルコビッチ。

ストーリー展開のない映像がとても多いんだけど、ちっとも退屈しないのは、映像+音楽でミュージックビデオみたいになってるからかな?音楽は…素晴らしいんだけど、印象が強すぎる気もします。

雄大サハラ砂漠を見下ろす崖の上で抱き合う二人の姿に共感すると、もうそれより先には何もない、という気がして来る。
こんな風に、まだ若くてきれいなうちに大きなものを失ってしまったら、その後の人生をどうするか。
アジアのどこかに行って、日本に帰れなくなっていついてしまった人たちの生活、とか。
想像するとちょっと怖いけど、頭のどこかに(うらやましい)という気持ちもある。
そういう切なく、恐ろしく、うらやましく、かつどこか懐かしいような感覚を描いた人間のドラマでした。