映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

トーマス・アルフレッッドソン監督「裏切りのサーカス」468本目

2回見るべき映画、らしい。でしょでしょ!(←ほかの映画でも1回ではついていけない自分を、ここぞとばかり肯定)

シド&ナンシーのシド役をやった役者さんが白髪まじりのベテランスパイだなんて。しかも堅物。シャーロック・ホームズは若手のエリートスパイ。そして英国王が今回は…。これだからイギリスの役者さんたちは最高です。

冒頭で、誤って罪のない若い母親が撃たれてしまう場面。
ハリウッド映画だったら、このとき母の胸に抱かれてる赤ちゃんが成長して英国諜報部に復讐をする、というだけの映画で終わるんだろうな。

元「シド」ゲイリー・オールドマンはもちろん素晴らしいんだけど、若く美しい二人、トム・ハーディとス…スヴェ…スヴェトラーナ・コドチェンコワにも目を奪われました。

で、ストーリーは複雑なんだけど、その複雑さを逆手に取って魅力にしてる感じです。100%わからなくても素敵な作品ってこと。…いや、もっと複雑な作品もたくさんあるし。

カメラワークは、秀逸!ひとつひとつのショットを、相当選んで選んで構築したことが伝わってきます。ヴォーグみたいな格の高いファッション雑誌のグラビア広告みたいにレベルが高いなぁ。彼らが乗ってる自動車がすごくかっこいいんだけど、あの車種は何??シトロエンDSっていうの?

というか映画全体の出来がものすごくいいですね。エンディングも、なんとも言い表せない快感。
なんでここにこんな明るいポップス。スパイって結局のところ悲惨、次の瞬間胸を張ってスーツのCMのように、生き延びたスマイリーとピーターが颯爽と会議室に入って来る。Life goes on。
原作がちょっと複雑すぎることは、素敵な映画のすこし苦いスパイスみたいな大人の味覚。
この監督の他の映画…原作者が違う作品を見て、真価を見極めてみたいです。