映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジュリアン・デュヴィヴィエ監督「望郷」459本目

TSUTAYAの店舗レンタルで、とうとう「コスミック出版」のDVDに出会ってしまった。私もたくさん持ってる、「10枚1600円」DVDです。単体だと500円だけどボックスセットだと1枚160円。それを300円で借りてしまった。著作権切れってのはそういうことなんだけど、なんとな〜くムズムズします。

原題はジャン・ギャバン演じる主人公の名前「ペペ・ル・モコ」、これが邦題では「望郷」。今の時代だとどっちもちょっと印象薄い気がします。「アルジェのなんたら」とか,もう少し長いほうが目につきやすいような…。

フランス統治下のアルジェリアが舞台か…じゃなくてこれが撮影された1936年は実際フランス領だったのですね。というか1962年に独立したのか。意外と新しいのでした。。
ジャン・ギャバンは怖くはないどこか愛嬌のあるワルで、ハードボイルドではありません。女に夢中になって危険を顧みず出かけてしまうあたり、人間味たっぷり。
彼をそこまで夢中にさせるギャビー(ガブリエラの愛称?)を演じるミレーユ・バランは本当に美しい。。。ここがカスバだからこそ輝くパリ的な魅力かもしれません。
ペペが他の女に心を移しても、彼を追い続けるイネスを演じるリーヌ・ノロもけなげ。
スリマン刑事を演じるリュカ・グリドゥ、川谷拓三にも見えるけど若い頃のロバート・デニーロにも似てます。人間ってものを知り尽くして、思い通りに人を追い込んでいくこの敏腕刑事のキャラクターは、けっこう注目です。

ペペが「最後に頼みがある。船を見送らせてくれ」というときの表情。ギャビーを見送る彼の少年のような顔。
甲板に立って風を受けるギャビーの凛とした美しさ。
カスバのエキゾチックな風景より、彼らの表情が印象に残りました。