映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マーティン・スコセッシ監督「タクシードライバー」414本目

タクシードライバーが殺人者だ」という中途半端な知識だけあったので、サイコみたいな映画だとばかり思ってみましたが、むしろ「裸の十九歳」みたいな、若者が犯罪に走る映画でした。でも、最後にハッピーエンドみたいになるのはおかしくない?いくら昔でも、こんなに人を殺して英雄視されるなんて、不自然。このエンディングはブラックユーモアだと理解すればいいんですか?

ベトナム戦争の影とか、銃や麻薬や少女売春で荒れるニューヨークや、今と違う背景があるのかな。妙な含みのある、感じです。だから、単純に面白かった!とか、名作だった!と言えない気持ちです。

役者さんたちはとても魅力的。ロバーデニーロが演じる主人公のタクシードライバーは、ナイーブで不器用で、それでいて傲慢で自意識過剰。
まだ少女のジョディフォスターが演じる売春婦は、妖しく魅力的。今ならクリスティーナ・リッチかな。
彼女が愛し、操られている女衒を演じるハーヴェイカイテルは、びっくりするくらい若くて、笑顔がチャーミング。タクシードライバーがつきまとうシビル・シェパードは上品で知的で明るく、確かに花が咲いたような美しさです。

役者さんのことも、ストーリーのことも、まったくゼロの状態で見たかったな…。