映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

チャーリー・カウフマン監督「脳内ニューヨーク」371本目

NYに旅行したばっかりなので、すてきな思い出に浸れるのかと思って借りたんだけど、全然違う映画でした。

さっぱりわからないまま、つまらないというほどのこともないので、最後まで通しで見る。
最後のほうでちょっと見えてきた気がしたので、もう一度見る。
やっぱりこれも(「ホーリーモーターズ」のように)映画は人生という名の劇場、というテーマなのかな。

妻に逃げられてひどく傷ついた、中年の演出家、ケイデン。
映画の始まりですでに中年、ラジオからは「秋は終わりの始まりの時期だ」などという声が聞こえています。
時間の流れは異常な早さで、4歳だった子どもがもう11歳だとか、自分も再婚してその相手との間に子どもがいたりだとか、します。

ケイデンが、登場人物=役者たちに演技をつけている場面も多いんだけど、演出家自身もどんどん老けていきます。つまり、中年のある時期からこの演出家はずっと、自分というひとつの演劇を、リアル自分のためにも、職業上も、作り続けている。

映画を完成させた時点でケイデンは老演出家で、自分の半生をすごい勢いで振り返っている、という話なのでしょうかね。

よお〜く見てるとそのくらい伝わってくるけど、そこまできても、だからいい映画だとか人に勧めたいとかまでは思いません。実験的なのにしては感じが良くて見やすい、でも何かを、足りないというより欠いてるような気もします。そんな作品でした。???