映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フレッド・C・ニューメイヤー+サム・テイラー監督「ロイドの要心無用」350本目

1923年作品。
NYのFilm Forumというところで見ました。映画保存・振興活動をしているNPOで、1970年からずっと活動をしてるそうです。最近ロイドの映画を数本見たのですが、「ヒューゴの不思議な発明」の中にも、この映画のなかの、時計の針にぶら下がるロイドの有名なシーンが使われていて、ぜひ見たいと思ってました。ちょうどNY滞在中に上映しているというので、これは行かない手はない!(無声映画だから、字幕さえがんばって追えば、聞き取れなくて困ることもない!)

感想は、非常に面白かったです。声を出して大笑いしました。
家賃を払えないので、大家さんがやってくると居留守を使うために、おもむろに友人と二人でコートを着込んで、そのままハンガーにぶらさがって足を抱えてコートのふりをするのとか!

観客はお年寄りが半分以上。といっても1923年当時この映画を見た人はあまりいないと思いますが。子ども連れもけっこういました。子どもたちも、大人たちといっしょにキャーキャー喜んで大笑い。アメリカでこういう喜劇映画が、こんなふうに素直に誰からも楽しまれてきた、ということがわかって、ちょっと幸せな気持ちになりました。

おそろしく難易度と危険度の高いスタントをロイド自身も行ったそうですね。右手の指を撮影中の事故で失っていたにもかかわらず!私はロイドのニカ〜っと笑った顔が好きなのですが、彼は苦労を顔に出さず、人を楽しませることに徹した、内側には熱いものをもった人だったのでしょう。

そして、人を感動させる表現だけでなく、驚かせたり楽しませたりする仕掛けも、極端なことを言えば技術がなんであっても構わないんだな、と改めて思います。

ロイドとミルドレッド(実際に奥さんでもある)の間に流れる優しい愛情も、微笑ましい名作です。機会があればぜひ見てみてください!