映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ヤン・イクチュン監督「息もできない」257本目

2008年作品。

どっかでタイトルだけ見てレンタルリストに入れといただけで、まったく事前情報なしで見た。これがよかった。

韓国映画だったんだー。すごい荒れた人たちだなぁー。こういうやくざみたいな人たちって、韓国にもいるんだー。という感じで見てた。話すより先に手が出る乱暴者の主役、サンフンが、監督で脚本も書いてるなんてびっくり。サンフン、最初は本当にコワいんだ。ぞっとするような、無意味な暴力にとりつかれていて。それが、多部未華子が気が強くなったみたいな女子高生と出会って、人間だったころの、普通にやさしい心を思い出してくる。

二人とも酒乱のひどい父に殺されそうになったりしたことがあって、心に深い深い傷を負っている。サンフンが、殺そうと思って行ったら自殺しかかっていた自分の父親を、身を呈して助けようとしている自分に気づいた夜。女子高生を夜中に呼び出して、二人で泣き崩れる場面。ずーんと切なかったなぁ〜。心のない鬼になれたらどんなに楽だろうね。

この映画は、リアルなすごいバイオレンスのある映画だし、単純な教訓に終わる映画ではないけど、見終わった後にやわらかい気持ち、家族や周りの人や子どもたちを大切にして、やさしく生きようよ、っていう気持ちになります。

誰の家族も殺人鬼にはならずに済んだ。大事な人たちが死んでしまったのは、誰かのせいではない、不注意の事故や、悪気のない攻撃。本当に悪い人なんか誰もいない。最後に罰を受けるのは、自分(主人公=監督)だけ。この監督、すごーく深いなぁ。いいことも悪いことも包みこむ。

そんな、心に残るところのたくさんある映画でした。