映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

東陽一監督「化身」238本目

1986年作品。80年代の匂いがぷんぷんします。
音楽も、フィルムの色合いも。ファッションも。ディスコも。最後のエンドロールなんて、むかしのカラオケの映像みたい!

大学教授で文芸評論家の藤竜也が、店に出たばかりのホステス黒木瞳をひっかけて、少女のような彼女をだんだん女として花開かせていく、というお話。
黒木瞳はまだ26歳。やせっぽちで、初々しいというより幼い感じさえします。当時藤竜也のほうは45歳。とはいってもスリムで若々しく、中年かもしれないけどくたびれた感じはないです。

映画は彼と阿木曜子演じる40歳くらいの女との情事の場面から始まります。藤は黒木に出合ってから彼女への興味をなくします。黒木が田舎者の小娘からしたたかな大人の女へどんどん変わって行く演技力がすごい。面白いですね、この人は。うるんで光る瞳、平然と悪女を演じるかんじ。「黒い十人の黒木瞳」ってだけのことはあります。

彼のお金でいろんな習い事をやったりして、店を始め、買い出し旅行に出ている間、すぐに前の女とヨリを戻そうとするし。なんともケダモノな男の物語です。そんな男は、黒木をほかの男に寝取られて、動揺してだんだん平静を失っていきます。実家の権利証まで持ち出して、借金までしたのに〜〜。(いやお前が悪いよ)

とはいえ、男の金で勉強したり店を開いたり豪華マンションに住んだりしておきながら、「私は大ちゃんと寝るためだけに生きてる女じゃないわ」・・・って言う生き物・・・なんですね、女は。

ちなみに、渡辺淳一原作の一連の文芸エロス映画のひとつです。彼の作品はエロス礼讃、老いも若きもエロスで元気&幸せ、というものかと思ってたんだけど、この映画の中では男のほうがずいぶん情けない。そこがちょっと、作家の若さを感じさせて新鮮でした。