映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ロバート・ベントン監督「白いカラス」233本目

2003年作品。

うーむ・・・。人種の問題って、私にはぴんと来ないところがあるけど、深いんだなぁ。

アンソニー・ホプキンスが、才能豊かだけど問題をずっと隠してきた男。人種差別をしたと決めつけられて大学教授の職を失い、妻も亡くし、1人で暮らす老人だ。
自分より30も若い掃除女と知り合い、付き合い始める、というその女を演じるのが二コール・キッドマン。荒んだ女をこんな風に演じられるとは。・・・といっても肌も目もきれいで、汚れた感じはありません。

ゲイリー・シニーズ演じる、若い小説家の友人の役割は、単なるスパイス的なものだと思ってたら、結末に向かって謎解きの重要な役割を持つようになってきます。教授が青春時代を過ごしたのが今から50年ほど前・・・ということが、こういう意味をもつのだ、という事実が重い。

日本にも、お隣の国から来た人たちや、昔からこの国に住む人たちを辛い目にあわせた過去があって、それを人ごとのようにしか理解できない私には、教授の生きてきた痛みはわかりようがない、ように思います。差別をしたことの痛みもわからない。自分は清廉潔白かなにかのようにふるまってる。自分の愛する人が親に許されない人、世間に認められない人だと知って、自分から去るという苦い決意を自分でした人の気持ち。家族に背中を向けて、隠し続けると決めた人の気持ち。

・・・噛みしめることが、見た人の仕事だと思います。以上。