映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ピエトロ・ジェルミ監督「鉄道員」175本目

1956年イタリア作品。
高倉健さんは出てきません。

監督のピエトロ・ジェルミは主演もしています。50歳になった機関士のアンドレアは、酒好きだけど仕事熱心で熱い男。献身的な妻と学校を出た息子と娘のほかに、まだ幼い末っ子サンドロがいる。労働条件は厳しく、線路に人が飛び込んできた後も休みひとつなく、疲れと動揺で赤信号を見逃してしまう。娘には、できちゃった婚を余儀なくされた男のほかに好きな人がいるようだし、息子はどうも怪しい仲間と付き合い始めたようだ・・・。

どこにでもある家族が一生懸命生きているだけの映画だけど、家族それぞれが失敗しつつも懸命に生きていて、いとおしくなります。同じようなテーマの映画はたくさんあるのに、なんでこの映画は心を打つんだろう?

鉄道員アンドレアの野性的で熱血な魅力。少年サンドロの屈託のない素直さ。妻サーラの家族を思う愛の深さ。娘ジュリアの愛にゆれる苦悩。息子マルチェロの若者らしい迷い。・・・いいことなど何もない、と母は言うけど、家族がそれぞれを思いあう気持ちがちゃんとあるじゃないか、と言ってあげたくなります。

酒場の仲間たちのあったかさもいいです。こんな町で暮らしたい!
いやほんといい映画でした。BSプレミアムはほんといいものばっかりやってますね。以上。