1983年作品。
ずーっと前からTSUTAYAで予約してて、やっと届きました。
上映当時、坂本スミ子が役作りのために前歯を削ったって話を聞いたのを覚えてるけど、姥捨て山の話だって聞いてたので、とてもじゃないけど見る気がしませんでした。当時の私は受験生だし。
すごく暗い、重い、汚れすぎ、といった感想が多いんだけど、さすが今村昌平、ちっとも難解なところのない、テンポのいいストーリーテリングな映画です。そのなかで人間たちも、虫や獣たちも交尾したり捕獲したり食べたりしています。脂っこい。ぎとぎとに脂っこい映画です。
おなじ日本人なんだし、どんな山奥だってもうちょっとみんな清潔にこざっぱりと暮らしてたんじゃないのか?今村昌平は人間を、泥水まみれの犬みたいに描きます。
わざとなんだよね。この監督らしい。
悲惨な風習かもしれないけど、そうまでして口減らしをする貧しさがその底にある。
海外で評価されるのは、そういう生活を憐れんだりさげすんだりするんじゃなくて、その人の国にもあるぎりぎりの生活を思い出して胸を衝かれるからだと思う。
それにしても、老いとか死とかがテーマなのに、やっぱりこの人の映画はエネルギッシュです。見終わってお腹がすくような感じがない。楢山へ行った人の生命力をほんとうに受け継いだかのように、若いものたちは顔に脂を浮かべてる。
さすがの完成度で、受賞する価値もみとめますが、好きかと言われるとDVD買って手元に置きたいものではないです。映画好きなら一度は見るべきだと思うけど。ただし、リアルな史実ではなくてコテコテに作りこまれた今村的世界を見せてくれます。
以上。