映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

日本映画(90年代以降)

園子温監督「エッシャー通りの赤いポスト」3292本目

これまで、私が見た園監督の最も新しい作品はAmazonオリジナルの2017年「東京ヴァンパイアホテル」だった。あれはひどい(いい意味で、きわめて園子温的)、やりたい放題の作品だったので、園監督を「エッシャー通り」を作らずにいられなくしたのは、直近の…

田中悠輝監督「インディペンデント リビング」3291本目

重度というのは、一人で生活するための介護が必要な度合いのことを示すのかな。首から下が動かない人とか。勉強したことがないのでそこをいい加減に推測するのはやめておきます。NHKの「バリバラ」で見たことのある人が何人か登場してる。重度の障害をもつ人…

岩井俊二監督「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」3287本目

岩井俊二監督の作品はけっこう見たつもりだったけど、これは今さらの初見。テレビ用に作られたから、アニメが公開される前はソフト化されてなかった?とか? 冒頭の先生役の麻木久仁子が若い。主人公の奥菜恵は、かなり小さいころから出てた記憶があるからこ…

濱口竜介監督「偶然と想像」3284本目

<各短編の結末にふれています> このタイトルは、確信犯だと思うんだ。ジェーン・オースティン「自負と偏見」みたいに日本語だと全くピンとこないけど、欧米の映画の原題みたいな感じがあるから多分、欧米言語話者には響くタイトルなんだろう。実際初公開の…

西川美和監督「すばらしき世界」3283本目

<ネタバレあります> 「ゆれる」の、「夢売るふたり」の、西川美和監督の作品。明るい未来やすばらしい世界など一切期待せずに見ます。 原作の佐木隆三は「復讐するは我にあり」の原作者か。あれも北部九州が舞台の犯罪小説だ。 これは…「由宇子の天秤」の…

大九明子 監督「勝手にふるえてろ」3265本目

若さはバカだ。バカとバカのぶつかりあいだ。 松岡茉優はいいですね。普通っぽい女の子も、こじらせた女の子も、複雑な生い立ちの女の子も、そこで生きてるように演じてくれる。よしかは、面倒くさ可愛いなぁ。ある意味理想の若い女の子とも思える。渡辺大知…

三木聡監督「インスタント沼」3262本目

2009年、もう12年前の作品。こういう、カラフルで楽観的な作品がいくつも作られた時代があった気がする。 今気づいたけど、麻生久美子って声がわりと太くて、アニメの主人公の男の子の声とかできそう。ということは、この役は今なら伊藤沙莉がやるかもしれな…

佐藤祐市 監督「ストロベリーナイト」3258本目

もう8年も前の作品か。テレビの刑事ドラマの映画化だけど、本格的な感じもある。極端な慟哭とか過度の怨恨とかはないから、私には見やすい。(殺人の動機はちょっと義理と人情に傾きすぎてて「ん?」と思ったけど、そこはまあいいか) 竹内結子って理想的な…

手塚真監督「ばるぼら」3257本目

多分、原作読んだことあると思う、大昔に。 江口寿史の「赤いワニの行進」みたいな(古すぎてわかる人あまりいないか)、多数の連載に追われた才能ある漫画家の苦悩が、こういうはじけた作品として昇華されるんだろうか? 苦悩する作家が稲垣吾郎、ばるぼら…

関根光才監督「生きてるだけで、愛」3255本目

原作の本谷有希子といえば「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」が面白かったので、小説や戯曲を何冊も読んでみた時期があったな。久々の映画化か。(「乱暴と待機」は見てないや) 感想をいうと、すごく良かった。趣里はぱっと見、岸井ゆきのにちょっと似てる…

アミール・ナデリ監督「CUT」3244本目

すごく絞った一つのテーマで作った作品だ。つまり、価値のある、娯楽でない映画を作り続けるためにどこまで犠牲を払いつづけるか。答は「命のあるかぎりどこまでも」。 といっても、兄がもう死んでんのに保険金かけてなかったのか、まだ弟から全額取るとかお…

是枝裕和監督「花よりもなほ」3236本目

わかりにくかった…。 是枝監督の作品は一通り見てみよう、と思って見てみたけど、のんびりとしてコミカルな長屋の人たちの雰囲気に飲まれて、仇討ちとか切腹とかが”場面のひとつ”としてするする流れていってしまった。 珍しく時代劇だけど、長屋のひとびとの…

坂東玉三郎監督「外科室」3232本目

これもずっと見てみたかった。最近映画はVODでばかり見てるけど、久々にTSUTAYAの宅配レンタルでまとめて借りた中の1つ。 ストーリーは知った上で見る。画面は一貫して美しく夢みるような感じ。ただ、寝て見た夢みたいに、ぼんやりとした気持ちになってしま…

原一男監督「全身小説家」3229本目

瀬戸内寂聴さんの訃報を受けて、彼女の主だった作品を読んでいたら、井上光晴とのロマンスとそれに続く出家という話があちこちで語られていて、この人のことも見てみなければと思った次第。 監督が原一男だからか、赤裸々に本人の日常をさらけ出してますよね…

行定勲監督「ピンクとグレー」3227本目

これと原作者が同じ「オルタネート」を読んだばかり。仕掛けを作る志向の人なのかな。「オルタネート」ではSNSを介して盛り上がるゲイのカップルや、お料理コンテスト、AIによる遺伝子マッチングなどを盛り込んでた。この作品では、幼なじみのトップスターの…

篠原哲雄 監督「犬部!」3222本目

面白かったけど、時系列が行ったり来たりする一方で、出演者たちの見た目が同じままなので、画面テロップの「200x年」をよく見ていないと混乱する。ワンコの成長で時系列をチェックすればよかったと、あとで気づく。 原作がノンフィクションで、同時期に別の…

清水康彦 監督「その日、カレーライスができるまで」3215本目

別府ブルーバード劇場にて鑑賞。この映画館を応援したいので、別府に行くと時間を作って、その時間にやってる作品を見て”お布施”?するようにしてます。 この作品は斎藤工(最近制作側でよく名前を見るな)の企画・プロデュースによる中編で、とにかくもうリ…

篠原利恵 監督「裏ゾッキ」3196本目

表のほうの「ゾッキ」を見たあと、「裏」も楽しみにしてました。 蒲郡、めちゃくちゃ協力的というか大歓迎だな…。東京とまるで逆だ。こんなに地味な作品なのに(笑)市長こんなにがんばっちゃって大丈夫なんでしょうか(笑) 蒲郡、ほんと静かな田舎町だな……

三池崇史 監督「龍が如く 劇場版」3187本目

友達(女性)がゲームにハマって、歌舞伎町の名が出るたびにいちいち「龍が如くみたい」って言うので、試しに見てみます。 上京以来ずっと歌舞伎町は近くて遠い存在…。よく通るけど、奥までは行かない町。歌舞伎町が舞台の映画とかドラマってけっこうあると…

荒木伸二 監督「人数の町」3179本目

設定が面白いので見たかったやつ。でも、落としどころをどうするのかなと思ってたら、やっぱり今一つ落としきれてない結末だったかな、と思います。 出ように出られない謎の音楽~ノイズ~割れるような頭痛は、孫悟空の「キンコジュ」みたいだな。私たちはし…

月川翔 監督「君の膵臓をたべたい」3177本目

<ネタバレあり> 一世を風靡してたなぁ。4年前の作品。北村匠海は「アンダードッグ」でアクの強い演技を見たけど、このときは内向的だけど芯が強い少年の役だ。浜辺美波が演じる桜良はひたすら明るくて可愛い女の子。女の子が桜良に感情移入する少女マンガ…

春本雄二郎監督「由宇子の天秤」3173本目

<すこしネタバレあります> 面白かった。すごい力作だった。 瀧内公美が主役の社会ものと聞いて気になっていた上、私がいつも拝読しているレビュアーの皆さんが軒並みすごい点をつけているのを見て、行ってきました。ミニシアターエイドでもらった「未来チ…

想田和弘監督「Peace ピース」3172本目

ボランティアは手弁当なのだ。手弁当ということは、弁当も自分で作るし電車代も何も出ないのが普通と思われている、ということだ。どこの政府もきっと、ボランティアとかやる人はたっぷり年金をもらって時間を持て余している老人か、夫の稼ぎで働かなくても…

市川準監督「トニー滝谷」3165本目

続けて見ると、見えてくるものがあるなぁ。 この作品では西島秀俊がナレーションをやっている。主役のトニー滝谷はイッセー緒方、美しく壊れた妻を宮沢りえ。彼女は「ドライブ・マイ・カー」のセックス中毒(のような感じ)のかわりに洋服を狂ったように買い…

松永大司 監督「ハナレイ・ベイ」3164本目

吉田羊はいい。村上春樹の主人公は、目立たない人じゃなくてぱっと見はなやかで美しい人たちが似合うんだな。かっこいい人生を送っている人。でも心の中の暗闇は深い。村上作品は最初から今まで全部、大事な人を突然失った真っ暗闇を埋められず、あの世とこ…

アッバス・キアロスタミ監督「ライク・サムワン・イン・ラブ」3141本目

<ネタバレあり> 予告編が邦画ばかりだし、冒頭のバーにはケバい若い女性たち。ちょっと昔の日本映画だよな…と改めて監督名を確認して驚いてしまった(わかって借りたはずなのに)。 この監督の作品は、イランでもトスカーナでも、コミュニケーションのズレ…

入江悠 監督「劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」3140本目

一度なにかのフェスで見たことがある。調べてみたら2014年にさいたまスーパーアリーナでやった「VIVA LA ROCK」だった。多分エレカシ狙いで行って、「ゲスの極み乙女。」「赤い公園」とかも見たな。今の若い子たちは実に健全な、運動会みたいなノリでライブ…

濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」3139本目

<結末にふれています> カウチ映画派の私が2日続けて映画館に通うとは。何としてもすぐ見たい作品が続く幸せをかみしめています。 村上春樹のほうは、「ドライブ・マイ・カー」を2015年に読んでました。ヤツメウナギとか、不愛想な若い女性ドライバーとか、…

崔洋一 監督「血と骨」3138本目

ビートたけしが立ちすくむビジュアルを見ると、やくざ映画かなーたくさん人が死ぬのかなーと思うけど、実話だし家族の物語なので、暴力は多いけど殺人は(あまり)起こりません。どこの国のどの下町にもいてもおかしくない、荒くれものの物語。家族は辛いよ…

タカハタ秀太監督「鳩の撃退法」3137本目

佐藤正午はもう何十年もずっと愛読している作家なので、久々の映画化を楽しみにしてました。直木賞を受賞した「月の満ち欠け」よりこっちのほうが面白かった一方、複雑だし主人公が地味すぎて、まさか映像化されるとは。彼の小説に主人公としてときどき出て…