泥まみれの悪いテーマパークみたいだ。ギリギリ、大丈夫なところに線を引いてその中で映像を作っているので、突然の死や残酷な映像をびくびくと恐れながら見る必要はない。柵の中からジャングルを覗いてる観客みたいな気持ちで見ればいい。
こういう映画ってほんと、自分の目で見てみないとわからない。解説には小難しいことしか書いてないし、感想は「汚すぎて最後まで見られなかった」というような人が多いけど、実際に見てみると、ホドロフスキーの映画や「ピンク・フラミンゴ」みたいな本当のグロじゃなかった。だいいちテンポがいい。これはタル・ベーラみたいな本当の極北ではなくて、泥まみれの人々が生き生きと生きて、カメラににっこりと笑いかける。描かれている世界は、生命力や欲に満ちた人たちが、アフリカのサバンナのハイエナたちみたいに生きて死ぬ世界。泥まみれのエミール・クストリッツァやテリー・ギリアムのような豊穣の映画なのだ。沈黙の場面などほとんどなく、次から次へと悪い奴や汚い奴が現れて、脂ぎった顔を輝かせて欲望をむき出しにする。
2時間経過した、映画の三分の二あたりで「神」であるドン・ルマータが「皆殺しにしろ」と周囲のものたちにささやく。神ってものはこういう風に気まぐれを起こすのか。それまでにも死は至るところにあったけど、そこから死は加速するように見える。最後は神々以外誰もいない星になって終わるのかな・・・。
見られないほとの映画ではなかったけど、露悪的で、深遠なようでいて見世物小屋みたいな映画だった。こういうのを作る人は、泥んこまみれが本質的に好きなんじゃないかね~。
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