映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ロブ・ライナー監督「恋人たちの予感」2215本目

実はこの映画見てなかった。ニューヨークのカッツ・デリカテッセンにも行ったのに!(くだんの場面だけは、なんかで見たことがあった)

ということで、たしなみの一つとして見ておくことにしました。さらっと。

老夫婦があいま、あいまに何組も出てきて出会いを語る、っていう構成だったのね。これは悪くないですね。恋愛、というより、男と女っていう違う性質の生き物どうしが、どうにかこうにかやっていくには・・・という映画だったのかな。

独身主義と言ってた昔の彼が結婚しちゃったの〜、と泣いてるメグ・ライアンが可愛かった。やっと素直になれたー!という直後の朝の気まずさも笑えた。大人になってしまうと、今さら素直にって言われても・・・という気持ち、痛いほどわかる・・・。私もきっとこれくらい頑固で可愛くない若い娘だっただろうな(※しかも全く異なるルックス)

ハリー・コニック・Jrの(流行ったよね)歌も軽くてロマンチックで良いです。

嗚呼、古き良き昭和のラブコメの世界。

恋人たちの予感 (字幕版)

恋人たちの予感 (字幕版)

 

 

ボブ・フォッシー監督「キャバレー」2214本目

これも見ておくべき映画の一つですよね。やっと見ました。

ライザ・ミネリが天真爛漫でカワイイ。相手役のマイケル・ヨークも、いかにもモテそう!な好感度。ライザ・ミネリって日本で見る誰かにそっくり・・・アイヴァンかな?

こんなに自由で楽しい彼らだけど、道のかたわらの遺体、ユダヤ人とドイツ人の別れ、など、不穏な影が差してきます。

「奴と寝たのか」「寝たわよ」「・・・僕もだ」

・・・いいなぁ。この場面。愛し合う二人とかじゃなくて、彼を巡って争う二人だったのか。もう3人で暮らせば?

・・・とは行かず、男にも女にも好かれるイケメンはアルゼンチンへ去り、二人は取り残されます。

「私たちバカね」

戦前のベルリンってこんな百花繚乱な街だったのか。ほぼ新宿二丁目。そして、フレディ・マーキュリーがあれほど憧れたライザ・ミネリはこんなにあどけない、少女みたいな人だったのか。越路吹雪みたいな迫力ある大人の女性かと思ってた。なんでも、知った気になってるのはこういう意外なことが起こる。

この映画はとにかく、出演者たちの個性と魅力が出色でした。

 

ペドロ・アルモドバル 監督「トーク・トゥ・ハー」2213本目

アルモドバル監督の視点は、面白いわ。今までは、ラテン・ヨーロッパ的だなとか思ってただけだったけど、繊細にものごとを観察して、おや?と引っかかったところを掘り下げる人なんだな。

<以下さっそくネタバレ>

その視点がすごくニッチなんだけど、「言われてみると確かに気になる」。新聞でたとえば、昏睡状態の女性が看護師の男性によってレイプされて妊娠・出産したという事件を見かけて、それは単に獣のような性的衝動によるものなのか?もし、そうでなかったとしたら?と掘り下げていくことで、こんな映画ができるのかもしれない。あるいは、昏睡状態に陥ったあとで、実は前の恋人とよりを戻していたことがわかったとしたら・・・。

看護師を演じてるハヴィエル・カマラは、なんか印象に残ってるなと思ったら「バッド・エデュケーション」の”綺麗くないオカマちゃん”を演じた人だ。 この役も、物腰が柔らかいのに、内にこもる思いを積み重ねていく人物。彼女の父親から見れば、とんでもないストーカーで変態だろうけど、ある意味純粋に彼女をひたすら愛した男でもある。よくこれだけ物語を膨らませられるなぁ。私はこういう、ラテン的にほとばしる妄想力を、高く評価する。私にはここまで自由に想像をふくらませる才能はないから。

やっぱり、この監督の作品はもっと見てみなくちゃ・・・。

トーク・トゥ・ハー (字幕版)
 

 

「恐怖劇場アンバランス1」2211−12本目(KINENOTE未登録)

円谷プロの1973年のテレビ作品。第一話、第二話が収録されています。豪華製作陣、豪華キャスト!昭和中期(こういう表現あまり見ないけど、きっとこれから使われていくに違いない)のクセのある映像、だんだん面白くなってきて、クセを気にせずに楽しめるようになっていきます。これ今再放送しても人気出るんじゃないかな〜。

第一話「木乃伊の恋」 原作:円地文子/脚本:田中陽造/監督:鈴木清順/出演:渡辺美佐子川津祐介、浜村純、大和屋竺ほか。

第一話の前半は、”入定”して即身成仏した木乃伊が発見されて、一時的に復活するという江戸時代の物語。第二話はそれを受けて現代によみがえる、夫の喪失と再会の物語。大映ドラマかしらと思うようなケレン味、アクの強さ。おどろおどろしい音楽は冨田勲。監督が鈴木清順だから、渡辺美佐子がとってもエロくてドキドキします。ちなみに狂言回し的に青島幸男が現れるのも昭和風味。

第二話「死を予告する女」 脚本:小山内美江子/監督:藤田敏八/出演:蜷川幸雄、楠侑子、財津一郎名古屋章ほか。

まだ若い俳優、蜷川幸雄がとってもフレッシュ。このとき38歳。顔の形が違うのに、不思議と藤原竜也に似てる。目月や表情が。彼は気に入られるはずだわ・・・。この頃は監督の演技指導とか受けてたんだろうになぁ。で、お雛様のようなメイクの楠侑子の幽霊みたいな存在感がすごい。

55分のボリュームだしなかなか力の入った作りなので、映画みたいに楽しめます。この続きも見てみるか・・・。 

DVD恐怖劇場アンバランス Vol.1

DVD恐怖劇場アンバランス Vol.1

 

 

メル・ブルックス監督「新サイコ」2210本目

原題は「High Anxiety」、高所恐怖症って意味なんですね。 全然「新サイコ」と違うじゃないの!でも冒頭に「ヒッチコックに捧ぐ」と出るし、病院の院長として赴任してみたら前任者が変死をとげていた、とかヒッチコックっぽくなくもないエピソードが続々と登場します。この映画は、ヒッチコックの膨大な映画の数々のいろんなエピソードをパロディにした盛りだくさんな映画なんですね。

「めまい」のぐるぐる、「サイコ」と言えばシャワーシーン、など、誰でも知ってる有名シーンが盛り盛りだけど、全体のトーンが明るく軽いメル・ブルックス流なので、なんとなく軽いお楽しみ映画って印象になるんですよね。そこがなんともいいんだけど。ドリフみたいな、お茶の間でもOKな感じが。こういう映画を気軽に楽しみたい日ってあるよね・・・。

最後に気づいたこと。一件落着、二人は結ばれて、「新しい名前が・・・」というときのミドルネームが「ハーポ」だ。そう言えばメル・ブルックスのカーッと声を出さずに笑顔を作ったときの表情はマルクス・ブラザーズのハーポとよく似てる。彼が目指してるのは、ハーポみたいな罪のない、子どもにも愛されるような笑いなんだな・・・。

 

山田尚子 監督「映画 聲の形」2209本目

たくさん借りたDVDの中から、どれを見ようかなって思って手に取ったのがこれだった。なんで今日なんだ。

苦しい気持ちで、もっと苦しくなるかなと少し覚悟してみたら、なんてことだ 、楽になってしまった。きれいで可愛くて優しい世界だった。心配してるつもりなのに、逆に癒されてしまった。やさしさに包み込まれてし まった。 こんなに気持ちにしてくれる美しい作品、たからものみたいなものを作った人 たち・・・。 この人たちの作ったものを、これから作るものを、もっと見よう。ずっと見て いよう。それくらいしかできないし、そうしたいと強く思っています。

映画『聲の形』DVD

映画『聲の形』DVD

 

 

ジョン・カサヴェテス監督「こわれゆく女」2208本目

ジョン・カサヴェテスの監督で、ピーター・フォークジーナ・ローランズが出てる映画だよ。アメリカの私の好きな面だけ集めて固めたようなもんです。嫌いなわけないよね!

でもこの映画は見て戸惑った。解説には、おかしくなってしまった妻を病院に入れると書いてあるけど、彼女の怒りや戸惑いは十分私にも共感できるもので、確かに反応はおかしいんだけど、怒って妻を殴る夫なら「病院に入れる」という考えにはならないと思う。彼女を入院するほど変だと思えない私は、病気の側に近いのか・・・。

メイベルは、普段も逆上したときも、頼りなくて少女のようなので、分裂症や躁鬱病より、強いていえば若年性認知症とか知的障害に近く見える。「頭が割れるように痛い」ってつぶやく場面があるから、脳血管の異常があるっていう設定なのか。

でも、暴れて人を殴ったりしないし、常にみんなを愛して尽くそうとするので、愛されている。

一体どこからが病気なのか、ということを私は常日頃から考えることが多い。メイベルくらいなら「不思議ちゃん」として流してあげればいいんじゃないか?この前に見た「パンチドランク・ラブ」の、切れるとガラスでも何でも殴って破壊してしまう男(怒らせる姉もなかなかムカつくんだ)の方が危ないと思うし。この映画の当時のアメリカの家庭って意外と「まともさ」に関して厳格なのかな。

監督はどうやってこの見つけにくいテーマを見つけたんだろう。身近にこういうことが起こったのかな。見た人たちはどう受けとめたんだろう。アメリカの人、日本の人、当時の人、今の人。。。

やっぱり、監督は女ばかりがお行儀の良さや出来の良さを求められるのを見て、なんとかしなければと思ったんだろうな。もっというと、自分が激昂したときの妻あるいは他の女性のもろさを見て心を痛めたのかも。彼は人間ってものが簡単に変わるとは思ってないからお説教っぽい映画は作らないけど、勇気を出してこの映画を世に出すことで、彼女たちの姿に注目してほしいと思ったのかも・・・。

原題のunder influenceってどういう意味なんだろう、何の「影響」なんだろう?って思ったけど、これは、夫やお酒やお客さんや突然の予定変更、様々なものごとの影響を受けて心が惑う女性たちの愛とやわらかさの物語なんだわ・・・きっと。カサヴェテス監督から妻ジーナ・ローランズへの深い愛とリスペクトに、拍手。