映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

リドリー・スコット監督「ブレードランナー ファイナル・カット」 2125本目

改めて、美術の素晴らしさに驚きますね。予算不足だなんて信じられない。最初はドン引きした「協力わかもと」のサイネージ(という言葉ができたのも最近だけど)も美しく感じる。未来的だけど落ちついたヴァンゲリスの音楽も素晴らしい。セットの安っぽさを見えなくするために常に暗い時間に撮影したと言ってましたが、それも重厚さを大きくアップしていて、チャらくなりがちな未来SFの中で、確固としていて、かつ、ギョッと目を引く世界観をガッチリと構築しています。これはやっぱり、監督リドリー・スコットの狂気や妄想の生み出した世界なんですよね。映画やアニメに世界観なんて言葉を使うことも、この映画の前にはなかったんじゃないかな・・・。

この映画に出て来る人たちはみんなゲルマン系かしらと思うほど、女性も肩幅がしっかりしててゴツいんだな。ダリル・ハンナショーン・ヤングハリソン・フォード、ルドガー・ハウアー…。

なるほど・・・ヘビ女さんがガラスを割って店から飛び出す場面は、「ファイナルカット版」ではこんな風にうまく加工されてるんだな。メイキングを見たときは、高いビルの窓から飛び降りる場面かと思ったけど、平らな地面の上だった。ストーリーも追いやすいし、美しく面白い映画に仕上がっているあたりが「ファイナルカット」なんですね。

新しい発見をしたりしながら、とうとうこの映画の舞台の2019年になってしまいました。11月まで後8ヶ月しかありません。2001年を超えて2010年もあっという間に過ぎてしまったあたりでみんな気づいてしまったと思うけど、未来SFで描かれる未来は私たちが近づくのと同じスピードで遠ざかっていくので、多分永遠に来ないんだよね。

起承転結が弱いのはやっぱり変わらないけど、改めてこの映画のすごさを思い知りました。さすが80年代ベスト1! 

 

 

 

チャールズ・デ・ラウジリカ 監督「デンジャラス・デイズ:メイキング・オブ・ブレードランナー」2124本目

ボリュームたっぷりだし、監督やメインキャスト、プロデューサー等々、この映画を作った主要な人たちがたくさん出てるので豪華です。普通にレンタルDVDに入ってる10分のインタビューとは違う。と言っても、それ以上に特に構成されてるわけでもない。

BSプレミアムでこれと「ファイナルカット版」が立て続けに放送されたのを録画しといて、やっと見たんだけど、こっちを先に見たのが良かった。ブレードランナーは、2049も含めて何度か見てるけど、予算オーバーとかミスとか、舞台裏の話を聞いた後で改めて見るのってますます面白い。

というわけで、ここは手短にまとめて、「ファイナルカット」の感想いきまーす。

 

濱口竜介 監督「寝ても覚めても」2123本目

演技経験のほとんどない人たちを使って撮った実験的な「ハッピーアワー」の監督じゃないですか。今回はきっちり作った映画ですね。

東出昌大はいまや定番の若手俳優だけど、相手方の唐田えりかの初々しいこと。こういう、地味めで清楚な子って韓国映画ではよくいるけど日本では割と珍しいと思います。こんな弱そうな少女みたいな子ととつぜん恋に落ちるのってなんかロマンチック。どう可愛いかというと、旅行に行って7日間も留守にした後のうちの猫みたい。(ペットシッターさんは来るとはいえずっとひとりだからね)多分霊感とかあって不思議ちゃんで、純粋な赤ん坊みたいな女の子。

麦(ばく)という、スターになった男との再会はリアリティがまるでないんだけど、現実として描かれてたの?正直すぎる女性がマリッジブルー、前に好きだった人といま好きな人とを変に比べてしまったというお話?彼女は不思議ちゃんだけど、同じ迷いを結婚前に持つのは男女どちらでもあると思う。前の彼氏彼女が、婚約者と似てても似ててなくても同じ。(でしょう?)そういう意味で、この作品のほうが新鮮味は少なかったかもしれません。主役の女の子の、ふわふわしているようで頑固でもある不思議なキャラクターのせいかな。

ところで、舞台女優の舞台を「中途半端だ」と批判する場面。批判しておきながら、「自分が諦めたことをやっているのが羨ましかったんだと思う」と告白する。…こういうのって監督の言葉なんじゃないのかな。映画の本筋とは関係ないからそう思う。

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ジアド・ドゥエイリ 監督「判決、ふたつの希望」2122本目

レバノンパレスチナの関係性なんて考えたことなかった。地図で見たらまさに隣り合ってるんですね。レバノンイスラエルよりもシリアよりも小さい国なのに、どちらからも難民が流れ込んできていて、人口の10%に達してるという。現状に満足していない地元の人たちが、難民たちに神経を逆なでされたときに、どこまで我慢できるのか。どこまで我慢しなければならないのか。難民の側は、難民収容施設で暮らしながら労務作業に耐える毎日のなかで、どこまでの暴言に耐えられるのか。

戦争が悪いとか宗教対立が悪いとか、人間の外になにか一般市民の力の及ばない大きな悪があると想定して攻撃するのが一番楽でたのしいけど、ここであいまいにしたくないのは、全て人間の中から出てきたものだということです。

映画的には、親子弁護士の対決っていう世代・性別の対決が面白い。監督はクエンティン・タランティーノ組で映画を作っていたということで、「映画は面白くなければ」ということを叩き込まれているのかもしれません。面白いし、国全体としては中立だというメッセージにもつながります。社会的なテーマだけど、重くなりすぎずドキドキさせながらグイグイ引っ張っていきます。

調査の中で白日のもとに晒される40年前の事件。「ケンカ両成敗」(ちょっと言葉が軽すぎるけど)ではなく、両者の心の底からの微笑みで終われることが何より大事。

それにしても、原題「The Insult(侮辱)」と邦題の違いは大きいです。日本でこの映画を見るひとは、原題のままだと多分重すぎてぐっと数が少なくなると思う。いきなりのネタバレもいいところだけど、最初から「希望」と書いていないと厳しすぎるので、これはこれで意味のあるタイトルなんだろうなと思います。

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ナタウット・プーンピリヤ 監督「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」2121本目

面白かった。題材も新鮮だし、タイの若いエリートたちの奮闘ぶりは、悪気たっぷりに悪いことをしてるのに、どこか応援したくなる。

カンニングっていうこと自体は、試験というものがある限り、有史以来世界中で行われてきたことだと思うけど、舞台が日本でもアメリカでも韓国でもなくタイというのが、正直とても新鮮。東南アジアというと暑くて湿度が高くて、開放的で明るい・・・というようなイメージを単純に持っていましたが(本当に単純で申し訳ない)、その中での受験戦争や貧富の差のなかの少年少女の普段の暮らしをかいま見て、もっと見ていたいなと思いました。

それに作りがとても洗練されてて、今後のタイの映画に期待が高まります。だって、人が死んだり凶悪犯罪が起こったり、自動車がたくさん爆発したりしなくても、ちゃんとスリリングで面白いし、人間がひとりひとり描けてる。

最後にリンはバンクの誘いにどう答えるのか?・・・ここに、監督の矜持が感じられました。この先楽しみな監督だなぁ。

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スティーヴン・ソダーバーグ 監督「恋するリベラーチェ」2120本目

この映画ずっと気になってました。リベラーチェは実在したアーティストで、美しいものを愛し続けたキッチュな大スター。きらびやかな、イメージ通りの”ゴージャスなゲイの人生”を生きたのに、おおやけにはゲイであることは隠し通した・・・って隠せるもんなんですか?

彼をのちに訴えた実在のスコットは、マット・デイモンではゴツすぎると思ったけど、見てみたら素朴でかわいらしい青年のイメージがよく合っていました。

大スターと若いアシスタントってなかなか難しい、不安定な関係だと思うし、この関係性が成り立つのは同性どうしだからだ。異性の場合、両方独身なら周囲が結婚しろだのなんでしないのかだの、言ってくるだろうし本人たちも考えざるを得ない。同性婚が一部の地域で可能になったと言っても、同性どうしが一緒にいても恋愛関係だとは思わない人も多いし、ましてや結婚しろと説教する人もあまりいないだろうから。・・・そういう、限られた状況でしか成り立たない関係性があるから、映画って面白い。

本物のリベラーチェがどうしても見てみたくてYouTubeで探したら結構ありました。超絶技巧+エンターテイメント性、愛嬌のある清潔なキャラクター。色々苦労もあっただろうけど、一生音楽を愛し、音楽に愛された幸せな人生だったんじゃないかな。画質の悪い映像の中からも、愛にあふれるオーラが伝わってきました。

大林宣彦監督「花筐/HANAGATAMI」2119本目

戦前の画家のキッチュなコラージュ作品みたい。昭和の大監督の耽美的な作品群も思い起こさせる。だいいちDVDジャケットがなんて美しいんでしょう。役者さんたちの動きも言葉もすべて様式的で、何もリアルじゃない、お人形みたいな美しさ。

どうして、大監督がうんと高齢になると、こんな風にセリフを棒読みさせるんだろう?新藤兼人は80歳のときはまだ「濹東綺譚」なんて艶っぽい映画を作ってたけど、彼はその後100歳まで映画を作り続けて、最後の作品「一枚のハガキ」は感情を込めたら怒られるみたいにみんな棒読みだった。大げさなお芝居が好きじゃなくなるってことなのかしら。

この映画は、どこか残酷な気配が最初から漂うなか、美しき少年少女たちがそれぞれの美をもって交わり、リアリティを持たないまま美しく散っていきます。

監督の他の作品、もっと日常的な場面を描いたものと、全然違う印象だったけど、少年少女の純粋さが失われて行くことの痛み、みたいな通奏テーマがあるのかな。

公開後なかなかソフト化されず、再映もほとんどなかったけど、やっとDVDで見られてよかったです。

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