ウディ・アレン監督「世界中がアイ・ラヴ・ユー」1913本目

しょっぱなからエドワード・ノートン(「アメリカン・ヒストリーX」や「ファイト・クラブ」より前の1996年、まだ30歳のふらふらっとした若者)がドリュー・バリモアに向かって愛の歌をうたってるんだけど・・・これ何?(笑)「ラ・ラ・ランド」じゃないよね?

この映画は、自然と笑えたなぁ。認知症が進んだお祖父さんは、生きてても死んでからも可笑しいし、いきなり切れるエドワード・ノートン好青年も、ハリー・ウィンストンのジュエリーを仕込んだスイーツを丸呑みする彼女も。凶悪犯ティム・ロスドリュー・バリモアが突然恋に落ちるのも。リベラルを自称している夫婦の息子が一人だけ典型的な保守派なのも可笑しいし、凶悪犯と恋に落ちた娘を見て突然保守派に豹変するのも。ドイツ系の家政婦も。

でも、全員がグルーチョ・マルクスの顔をしたパーティはちょっと「センスがいい」と思えず、ウディ・アレンっぽくないなぁ。恋愛をする人が多すぎてどこが真ん中かわからないし、大いに笑えるけど割とこの監督にしては何も残らない映画、、、という気持ちになりました。 

 

ハル・アシュビー監督「チャンス」1912本目

ピーター・セラーズの遺作なんですね。制作から40年もたった今やっと見ました。 

この40年は、正直、長かったのかも。この映画のユーモアが、あまりストレートに入ってこなくてちょっと残念でした。

チャンス氏は私の目には、最初から上品な紳士すぎて、どこをどう見ても庭師じゃなさすぎる。見た目に反して、受け答えはあまりに会話になってなくて、いろいろ無理があ流・・・。それでもめちゃくちゃ無理な設定で通してしまうのが英国流ユーモア、だっけか。やりすぎるくらいやりきる可笑しさ。

これが遺作だと知って見るからか、ちょっと切ない気持ちで見てしまうのかな。

エンドロール後のNG集はすごく笑った!

チャンス (字幕版)

チャンス (字幕版)

 

 

 

オットー・プレミンジャー監督「バニーレークは行方不明」1911本目

1966年のアメリカ映画。

この監督の「ローラ殺人事件」面白かったんだよなぁ。

冒頭のキッチンでテーブルにたくさん並んでるの「ジャンケット」というのは、牛乳で作ったデザートらしい。知らないデザート、こういうネーミング・・・というあたり、イギリス映画かと思ったよ!舞台もイギリスだしね。

若いお母さんアンを演じてるキャロル・リンレイ、きれいで可愛い・・・。その「兄」はなんだか夫のよう。子どもの悪夢の話を延々とテープで流し続けるおかしな婦人。ローレンス・オリヴィエが演じるニューハウス刑事が介入してきて、やっとこのふわふわとした状況が少し締まってきます。この頃の彼は知性や経験からくる貫禄があって素晴らしい存在感ですね。

なんとなく最初からいやな予感がしてたんだけど、だんだん(本当はそんな子、最初からいなかったんじゃない?)という予感が確信に近くなっていきます。

一方で、ますます怪しくなってくる大家と老婦人、そして兄。一体誰を信じて、誰を疑えばいいの・・・。ここで圧倒的に信頼感があるのは刑事です。

・・・終盤、とうとう真実が明らかになるに連れて、実は割りにみんな真実を語っていたことや、怪しいと思ったのが当たっていたことなどがわかってきます。

 まぁ・・・なんて怖い映画でしょう。ヒッチコックの胃が痛くなる感じとも違う。小さい頃にお化けや妖怪や悪い人たちを怖がっていたのはこういう心情だったんじゃないだろうか。本当にこの監督の映画はすごいです。いやぁ面白い。この映画を見つけて、見ることができて良かった〜〜。

 

ラース・フォン・トリアー監督「アンチクライスト」1910本目

この監督だし、他の人の感想を見たらかなり怖そうだったけど、覚悟して見たらショックはありませんでした。ウィレム・デフォー、シャーロット・ゲンズブールという見慣れた人たちの演技だったこともあるかも。

タルコフスキーに捧ぐ」と監督がいうのも、なんとなく伝わってくる。子供が部屋からいなくなるゆっくりとした映像、深い深い森の描写。でもタルコフスキーの映画には絶対ゲンズブールは出ない。絶対。

あと、タルコフスキーはここまで人間の欲望にずぶずぶに入り込んだりしない。恐ろしくクールだ。

深入りしてるんだけど、それほど重く感じなかったのは、映画の長さが104分と短めだからかな。とはいえ、楽しい映画ではなかったし、心にずっしりくる感じでもなかったです。トリアー監督の映画の中では、他の映画の方が好きかな・・・。

アンチクライスト(字幕版)
 

 

エリック・ロメール監督「緑の光線」1909本目

なんだこの映画・・・ノンフィンクションみたいだ。普通にOLのような人たち、普通に年金生活者のような老人、キャッキャ言ってる赤ちゃんを抱いたお母さんたちが、現場音のまま日常的にお話をしてる。

バカンス先で食肉批判をしたりドストエフスキーを読んだり、という気難しいOLが、女友達にはボーイ・ハントを勧められ、自分は気乗りがしないのに一人で海に泳ぎに行ったり、なんかもう、うまくいくわけない休日。日本の映画にもありそう。可愛いのにオタクで普通のナンパに対応できない女の子の初めての恋、みたいなの。

ジュール・ヴェルヌの小説「緑の光線」って本当にあるの?(答:あるみたいです)

なんでエンディングの音楽が、怪獣映画みたいに不穏なの?

フランス人の感覚は全部はわからん、と思いました・・・。

今の日本の独身男女は、一人で旅行するのも簡単だし楽しく過ごせるよううまく企画されてるけど、便利すぎて「一緒に旅行できる友達を作ろう」って思う必要もない。気難しいデルフィーヌよりもっと出会いが難しい気がするのは、この便利さゆえ、という面もあるよなぁ・・・。

緑の光線 (エリック・ロメール コレクション) [DVD]
 

 

野村芳太郎監督「配達されない3通の手紙」 1908本目

1979年の作品。脚本は新藤兼人

今見ると違和感があるのは、蟇目良のエキゾチックな存在感の必要性がないこと。婚約者がいる妙齢の末娘が彼とずっと二人で探偵をやること。(婚約者が刑事なのに、ほったらかしで!)

長女が駆け落ちして外で暮らしてるっていう設定も関係してこない。松坂慶子が現れた時に片岡孝夫がそれほど驚かない。松坂けいこのお行儀の悪さに対して、父と母がひたすら寛容を装うのも不自然。妹に対して「妹へ」と手紙を書く奴はいない。手書きの手紙があるのに誰も筆跡鑑定をしない・・・などなど、ど〜もスパッと入ってこない。

でも、情緒的なサスペンスとして面白く見ました。

女優さんたちは皆、それはそれは美しく色っぽいし、片岡孝夫は女でもめる男の典型(地としか見えない)だし、キャスティングは絶妙なんじゃないでしょうか。

何より、邦題が素晴らしい。原題よりよっぽどエラリー・クイーンがつけそうなミステリアスなタイトルです。

配達されない三通の手紙 [DVD]

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セス・ホルト監督「恐怖」1907本目

1961年のイギリス映画。白黒の、ヒッチコック映画みたいに緊張感のある画面。

冒頭で湖から引き上げられる女性は誰なのか?嫌な予感しかしない映画の始まりです。

感じやすい少女、その父はなぜか突然姿を消していて、家に入り込んでいるのはクリストファー・リー演じる怪しいドクター。義母はそれほど悪い人には見えない一方、素朴で優しいドライバーのボブ。少女ペニーを演じるスーザン・ストラスバーグは、知的で美しく、そしてデリケート。完璧な恐怖映画のシチュエーションで、胃が痛むようなスリルをじりじりと楽しみましょう。

・・・そして、最後の大どんでん返ーーし!

どんでん返すとしたら、このパターンしかないよな・・・と思いながら見ていたらその通りになってしまったけど、やっぱり驚いた。面白い。なんて面白い映画でしょう。

オカルトや心理劇ではなく、とっても論理的に構築されていて、2018年に見ても違和感ないです。(今作るならもう少し、あれこれ作り込むだろうけど)

この映画をなんで見ることにしたのか覚えてないけど、見てよかったー!セス・ホルト作品、機会があったらまた見よう。